1.原革
選別されたキョンという小さな鹿革丈を使用しております。一頭から四指弽が作れない皮が多い位の小さな鹿です。その革を当店では長年使用してもらうため、普通の染皮は使用しておりません。鹿革には湿気や汗に弱く、劣化しやすい弱点があります。それを防ぐため、大変手間と費用がかかりますが白い革を藁の煙で燻して着色する「ふすべ革」を使用しております。古来より最適とされているものです。
2.部品断裁
燻された革を大まかに裁断された後、手型の寸法に合わせ調整されます。
3.立体成型加工
その裁断された革を当店では手首の部分の革のだぶつきを解消するため、立体成形を施します。
4.縫製加工
帽子の当たる部分の中指または薬指を二重加工しながら縫い上げます。
5.控皮の原革
控は薄い牛革を三枚ほど張り合わせて形を作るのが一般的ですが、折り曲がる弽を作る目的から一枚の厚い牛革のベンズを使用しております。これは紳士靴の底革等に使われているもので、現在は柔らかいベンズしか製造されていませんが、製造中止になる前に仕入れておりました。適した硬い弾力性のあるベンズを使用しております。
6.控皮の成型
裁断されたベンズを手型に合わせて成形します。これが無争弽の一番の特徴部分の作業になります。帽子を後に据える作り方と違い、初めから控の本体を帽子と一体に作りあげます。折り曲がりながらも、壊れないようにする為、八ケ所程に、他にない工夫が施されています。
7.帽子の角(つの)の制作
硬く丈夫な木を小刀などで親指に合わせ、帽子の中に入る角を作ります。
8.帽子本体の制作
一体に作られた控に縫い合わせた台革を張り合わせます。それらに色々な部分の革が付けられ、包皮に特殊加工が施されます。
9.スベリ止加工
中指または薬指帽子が当る箇所にスベリ止加工を施します。
10.完成
弽紐等を付け出来上がります。